火災は、いつ・どこで起こるかわかりません。そんなとき、初期消火に使える「消火器」は心強い味方です。
でも、いざ購入しようとすると「種類が多すぎて違いがよくわからない…」「どれを選べば家庭用に向いているの?」
と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
消火器は“とりあえず置いておく”だけではなく、用途や場所に合ったものを選ぶことがとても大切です。
このページでは、防災士の視点から、家庭用消火器の基礎知識をわかりやすくまとめました。
「粉末」「強化液」「スプレー型」の3つのタイプを中心に、それぞれの特徴や選び方、注意点を解説しています。
まずは、あなたのご家庭に合った“1本”を見つけるところから始めてみましょう。
家庭用消火器の、種類と特徴
消火器にもいくつか種類があるって知っていますか?
今回は家庭で一般的な3種類に絞って解説します。粉末消火器、強化液消火器、そしてスプレー型消火器です。
それぞれ特徴やメリット・デメリットがあるので、目的や使う場所に合わせて選ぶことが大切です。
① 粉末消火器とは?
家庭やオフィスで最も多く使われているのが「粉末消火器」です。
赤いボディの消火器といえば、このタイプを思い浮かべる人が多いでしょう。
価格が手ごろで寿命も長く、家庭で取り入れやすい一方、使い方や使った後に注意すべき点もあります。
ここでは粉末消火器の特徴を詳しく解説します。
「粉末消火器」の値段と使用期限は?
粉末消火器の大きなメリットは、コストパフォーマンスの高さです。
家庭用で販売されているものはおよそ 3,000〜6,000円程度と比較的安価で、手に取りやすい価格帯。
さらに、使用期限が長いのも特徴です。
使用期限は約10年とされており、強化液タイプ(約5年)と比べても倍の長さがあります。
「粉末消火器」の仕組み
粉末消火器の仕組みは、薬剤となる粉を勢いよく噴き出し、炎を覆って酸素を遮断することで火を消すものです。
火は「可燃物」「熱」「酸素」の3つが揃って初めて燃え続けます。粉末消火器は、この中の「酸素」を断ち切ることで火を強制的に止めるのです。
噴き出した粉は炎のまわりを一瞬で覆います。瞬時に広範囲を覆えるため、火の勢いをスピーディーに抑えるのが得意です。
「粉末消火器」の噴射時間
粉末消火器の噴射時間は、家庭用サイズで およそ10〜20秒程度。意外と短いです。
「1分くらい使えるのでは?」と思う方も多いですが、実際に噴射できるのはほんの数十秒しかありません。
そのため、ためらって小出しにするのではなく、火の根元を狙って一気に噴射することが大切です。
消火器は長時間使えるものではありません。普段から噴射時間の短さを知っておくことで、いざというときに迷わず使えるようになります。
「粉末消火器」は再燃するって本当?
粉末消火器は、炎を素早く覆って酸素を遮断し、火を消す力があります。しかし、薬剤が内部に浸透しないという弱点があります。
木材・布・紙などは表面が消えても奥に高温が残りやすく、粉末はその部分まで届きません。そのため「消えたと思ったのに、時間が経って再び火が出る=再燃」が起きてしまうことがあるのです。
再燃防止のためには、粉末消火器の薬剤をしっかり使い切ることが非常に重要です。中途半端に止めてしまうと、内部に火種が残り、再び燃え出す危険が高まります。
それでも再燃してしまった場合は、無理に消そうとせず、速やかに避難・通報を優先してください。
「粉末消火器」を使うと部屋が真っ白に?
粉末消火器は消火力が高い一方で、実際に使うと「使いにくさ」につながるデメリットもあります。
まず、粉が勢いよく噴き出すため、使用中は視界が真っ白になり火元が見えにくくなる点です。狙いが定まらず、火が完全に消えたかどうかも確認しづらくなります。
さらに、使用後の掃除も大変です。粉はとても細かいため部屋中に舞い散り、家具や家電の隙間にまで入り込みます。最悪の場合、家電が故障することもあるので注意が必要です。
② 強化液消火器とは?
粉末タイプに次いで家庭用として選ばれることが多いのが「強化液消火器」です。
「掃除が楽で再燃しにくい。でも寿命は短めで価格は高め」これが強化液消火器の特徴です。
水系の薬剤を使うため、木材や布などの火災に強く、粉末に比べて再燃リスクが少ないのが大きなメリットです。
一方で寿命は短く、コストは高め。室内での使用に向いている消火器です。
「強化液消火器」の値段と使用期限は?
- 値段:家庭用でおよそ 7,000〜10,000円程度
- 使用期限:およそ 5年(粉末の約10年に比べると半分)
強化液タイプは粉末に比べて導入コストが高く、使用期限が短いという特徴があります。
「強化液消火器」の仕組み
「強化液」とは、水に消火性能を高める薬剤を加えた液体のことです。
この液は火元にかかると、熱を下げる・燃えている物に浸透するといった働きをし、表面だけでなく内部までしっかり冷やすことができます。
そのため、粉末消火器では残りやすい 木材や布の内部の高温 にも対応でき、再燃を防ぐ効果が高いのです。
「強化液消火器」の噴射時間
強化液消火器の噴射時間は、家庭用サイズで およそ30〜40秒程度。粉末よりもやや長めですが、それでも意外と短いです。使うときはためらわず、火の根元を狙って一気に噴射することが大切です。
粉末タイプよりは長めとはいえ、想像よりも短いと感じるはずです。「思ったより長く使えない」ことを頭に入れておきましょう。
強化液には「中性タイプ」と「アルカリ性タイプ」がある
強化液とひとことで言っても、実は大きく2種類に分けられます。
中性強化液消火器は、人体や家具・家電に対してやさしい成分で作られており、住宅用として安心して使用できるのが特徴です。食品添加物など安全性の高い原料をベースにしているため刺激が少なく、消火後の片付けも拭き掃除で簡単に済みます。金属への腐食性もほとんどないので、家庭環境に置きやすい消火器といえます。
一方でアルカリ性強化液消火器は、炭酸カリウムなどのアルカリ成分を含み、油火災に強く高い消火力を発揮します。その反面、人体への刺激や金属の腐食リスクがやや高いため、使用に注意が必要です。どちらかといえば産業現場や油を扱う場所に向いており、一般家庭での使用はあまり推奨されていません。
強化液消火器には「中性タイプ」と「アルカリ性タイプ」がありますが、家庭用として選ぶなら中性タイプがおすすめです。
③ スプレー型消火器とは?
スプレー型消火器は「エアゾール型消火具」とも呼ばれるタイプです。見た目はスプレー缶に似ており、キャップを外して押すだけで使える手軽さが特長。軽くて扱いやすく、キッチンやリビングなどにも置きやすいコンパクトさが人気です。
「スプレー型消火器」の値段と使用期限は?
家庭向けに販売されているものは 1,500〜3,000円程度 とリーズナブル。ただし、使用期限はおよそ3年 と短めなので、定期的な交換が必要です。
「スプレー型消火器」の仕組み
スプレー型消火器(エアゾール式)は、容器の中に消火剤とガスを充てんし、その圧力を利用して薬剤を噴射する仕組みになっています。
普段使うヘアスプレーや制汗スプレーとほぼ同じ仕組みで、片手で操作できるのが大きな特徴です。
「スプレー型消火器」の噴射時間
製品によって差はありますが、噴射できる時間は 約18〜30秒程度 が目安です。
消火器の代わりになる?
結論から言うと、スプレー型消火器は住宅用消火器の代わりにはなりません。
エアゾール式簡易消火具は初期火災に対して有効ですが、消火能力は住宅用消火器より劣ります。
そのため、スプレー型消火器はあくまで 補助的な道具 として考えるのが安心です。
火災が大きくなってしまった場合は、迷わず避難を最優先にしましょう。
注意点
「ABC対応消火器」を選べば安心
消火器を選ぶときに、必ず知っておきたいのが「火災の種類とその対応」。火災には主に 3つのタイプ があり、それぞれに適した消火方法があります。
A(普通火災): 木材・紙・衣類などが燃える火災
B(油火災) : 灯油・ガソリン・天ぷら油などの油類が燃える火災
C(電気火災): 通電中の家電や配線などが関わる火災
これらA・B・Cすべてに対応したものが、よく聞く「ABC対応消火器」です。買う時にこの表示があるかは確認して下さい。
リサイクルシールについて
消火器には「リサイクルシール」が貼られている必要があります。
これは適切に廃棄・回収を行うための仕組みで、2009年以降に製造された消火器にはこのシールが貼付されています。
使用期限を過ぎた消火器は、このシールの有無を確認し、販売店や自治体の指示に従って処分しましょう。
リサイクルシールの費用は本体価格に含まれていることが多いですが、中古品や格安品には貼られていないこともあるので注意!
まとめ
家庭用消火器には「粉末」「強化液」「スプレー型」など、いくつかの種類があります。
特徴や価格、使いやすさはもちろん、どこで・誰が使うかをイメージして選ぶことが大切です。
消火器を選ぶときに意識したい3つのポイント
① ABC火災に対応しているか
② 種類(粉末・強化液・スプレー)の違い
③ 使用期限
まずはこの3つを押さえて、ご家庭に合った1本を選んで下さい。
そして、購入後にもっと大切なのが、すぐ手が届く場所に置いておくこと。どれだけ性能のよい消火器でも、使えなければ意味がありません。
火災はいつ起こるかわかりませんが、正しい知識と備えがあれば、守れるものは確実に増えます。
家庭に合った1本を選び、“すぐ使える場所”にしっかり備えておくこと。それが、あなたと家族を守る最初の一歩になります。

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